ネットワークで支える嚥下障害改善のための口腔ケア
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高齢社会が到来し、病気や口腔機能低下により口から食べることが困難な嚥下障害の方がますますふえています。嚥下障害者をサポートし改善に導くには、地域ぐるみで多職種が協力しながら関わるチームアプローチが必要であるといわれています。本書は、和歌山県下でチームを組み嚥下障害改善に取り組む歯科医師、耳鼻咽喉科医師、理学療法士、言語聴覚士、管理栄養士の5人が、各々の専門の立場から語ったお話をまとめたものです。在宅や施設でチームアプローチに取り組む際の指針と、成功へのヒントを与えてくれます。
気道感染を予防するための口腔ケア法……藤原修志(歯科医師)
口腔ケアと他職種の関わり/口腔機能の検査のいろいろ/口腔内保持の力をつける訓練/口腔乾燥や舌苔のケア/舌の動きを高めるケアとリハビリ
咽頭ケアと摂食の工夫……藤原啓次(耳鼻咽喉科医師)
誤嚥を起こすメカニズム/誤嚥の原因となる疾患/摂食・嚥下機能を調べる方法/摂食・嚥下機能障害の評価と対策アプローチ
安全に経口摂取できる姿勢とは……北出貴則(理学療法士)
姿勢不良の多い現状/ベッドでの姿勢の改善対策/車いすでの姿勢の改善対策
誤嚥を防止する基礎訓練と嚥下体操……関口恵利(言語聴覚士)
摂食・嚥下障害のリハビリテーションの目的/だれにも行いやすい間接的訓練/やや専門的な間接的訓練/嚥下を促す直接訓練
嚥下障害者のための食品と食形態……吉村幸代(管理栄養士)
摂食・嚥下障害の段階と食の形態/嚥下障害食に求められるもの/嚥下障害食の進め方と料理例/家庭でもできる嚥下障害食
症例別ネットワークの実践……藤原修志、藤原啓次、北出貴則、関口恵理、吉村幸代
症例1. 姿勢改善に向けてのアプローチ-パーキンソン病の実例-
症例2. 水でむせる、鼻から水がもれる方の改善対策-脳梗塞患者の実例-
症例3. むせながらも食べている方の改善対策-脳梗塞患者の実例-
摂食・嚥下障害をサポートしていくために
本書は、和歌山県下で、チームを組んで嚥下障害の改善に取り組む、歯科医師、耳鼻咽喉科医師、理学療法士、言語聴覚士、管理栄養士の話をまとめたものです。それぞれが自らの専門的な立場から、摂食・嚥下や口腔ケアについて語っています。この5人の様々な組み合わせによる関わりで、大きな力を生み出しているのです。また本書の最後には、5人が関わる実践例を座談会形式で紹介しています。
(中略)
医療者、介護を受ける方、ご家族、地域が相互に関わることは、人と人をつなぐ関係性のネットワークづくりでもあります。それは地域の中で、場合によっては家族の中で、孤立しがちな患者や高齢者を、みんなで支え合う温かい医療といえます。
地域でチームアプローチを始めるには、実際にはさまざまな障壁があるのも現実です。それでも、一歩踏み出してみなければわからないこともたくさんあります。本書が、すでにチームアプローチに取り組まれている方々、そしてこれから取り組まれようとしている方々にとって、微力ながら一助となることを願っております。